【米国株分析】マーシュ・マクレナン(MMC)とは?高ROE&安定成長が魅力の保険コンサル銘柄

企業概要

マーシュ・マクレナン(Marsh McLennan)は、リスク管理・保険仲介・人材・経営コンサルティングを手がける世界最大級の専門サービス企業です。1871年創業、本社はニューヨーク。世界130か国以上で事業を展開し、約85,000人の社員が在籍しています。

同社は、以下の4つの主要ブランドを通じてサービスを提供しています:

  • Marsh(保険仲介・リスク管理)
  • Guy Carpenter(再保険仲介・リスク分析)
  • Mercer(人事・年金・健康関連コンサル)
  • Oliver Wyman(戦略・経営コンサル)

それぞれの分野でグローバルにリーダーシップを持ち、企業や政府の複雑な課題に対し、専門知識とデータ分析を活かしたソリューションを提供しています。

主要事業

1. Marsh(マーシュ)

商業保険・企業リスク管理を担う世界最大級の保険仲介会社。業種別の専門知見に基づいた保険ソリューションを提供。

2. Guy Carpenter(ガイ・カーペンター)

再保険仲介およびリスク分析サービスを提供。保険会社に対するリスクヘッジ手段の設計と資本効率の最適化を支援。

3. Mercer(マーサー)

人材・福利厚生・退職制度の戦略コンサルティングに特化。人的資本における企業価値向上をサポート。

4. Oliver Wyman(オリバー・ワイマン)

戦略・経営コンサルティング部門。特に金融、ヘルスケア、航空、エネルギー分野に強みを持ち、高度な分析と提言で企業の競争力を支援。

株価指標

指標目安コメント
現在株価$229.3過去の理論株価と整合しており、成長期待を織り込んだ水準
時価総額1,129.97億USD米国を代表する大型株。流動性・安定性ともに高い
自己資本比率23.60%高いほど良いやや低めだが、資産の流動性が高く許容範囲
ROE30.50%15%以上非常に優秀。資本効率の高さは同業他社と比較してもトップクラス
PER28.1倍20倍以下割高感あり。ただしEPS成長率と比較すればプレミアムも納得
PBR8.0倍3〜4倍以下ブランド価値と利益率の高さを反映した水準。無形資産が多い業種特有の傾向
PSR4.62倍1〜2倍以下通常の基準では割高だが、利益率の高いビジネスモデルに支えられている
配当利回り1.40%2%以上が目安配当よりも成長重視の企業。配当性向は抑制的だが安定している

一見すると、PERやPBR、PSRといった指標はやや高めに見えるかもしれません。しかしながら、同社のビジネスモデルは高収益・高ROE型であり、それが市場からのプレミアム評価につながっている可能性もあります。

次章では、これらの数値一つひとつを深掘りし、「現在のMMCの株価が妥当なのか?」「成長余地はあるのか?」といった視点から、長期投資にふさわしい銘柄かどうかを検証していきます。

株価チャート

こちらはマーシュ・マクレナン(MMC)の株価パフォーマンス(1969年〜2024年)をS&P500指数(SPX)と比較した長期チャートです。

  • MMCの株価は過去約50年で+9,189%の上昇
  • 一方、S&P500は+6,393%の上昇
  • 指数を大きく上回るアウトパフォームが続いている

マーシュ・マクレナンは、保険仲介・再保険・人事・戦略コンサルといった景気耐性のある事業を中心に展開しており、リーマンショックやパンデミックといった局面でも大崩れしない安定性があるように思えます。

業績推移

財務概要(2009年~2024年)

マーシュ・マクレナン(MMC)は過去15年間で安定的かつ持続的な成長を遂げており、その財務体質は極めて健全です。

1. 売上成長

  • 2009年:$10.5B → 2024年:$24.5B
  • 年平均成長率(CAGR)は約6.2%
  • 特に2021年以降はM&A効果やリスクコンサル需要の増加により売上が加速。

2. 営業利益・純利益の推移

  • 営業利益は2020年以降に急伸、2024年には約**$6.1B**。
  • 純利益も同様に拡大し、2024年:$4.08B(2010年比で約4.6倍)。

3. 利益率の改善

  • 営業利益率は10%台前半から直近は25%近くへ向上
  • 純利益率も2020年頃の12%前後から16%以上を安定的に確保しています。
  • 販管費率も年々減少しています。
  • 高付加価値型ビジネスモデルの浸透と、コンサルティング部門の利益貢献が要因と考えられます。

4. EPS(1株あたり利益)

  • EPSも着実に成長し、2009年:$0.14 → 2024年:$8.10
  • これは株主還元力の向上自社株買いの効果を表す重要な指標です。

株主還元

フリーキャッシュフロー(FCF)の安定成長

  • 2014年:$940M → 2024年:$3,842M
  • 約4倍に増加しており、配当余力が年々拡大している点が非常にポジティブ。

株数の継続的な減少

  • 発行済株式数はこの10年で約9%減少
  • 積極的な自社株買いによる株主還元策がとられている。

配当利回りは控えめだが健全

  • 配当利回りは1〜2%台と高配当株ではない
  • しかし、配当性向が過去10年で50%を超えたのは2度のみで、近年は30%以下に低下。
  • 「無理せず出せる範囲」での安定配当を徹底しており、財務面の健全性が伺えます。

配当だけを見ると物足りなさを感じるかもしれません。しかし、マーシュ・マクレナンの配当は「堅実で持続可能な成長」に裏打ちされたものだと思います。潤沢なフリーキャッシュフローと継続的な自社株買いにより、株主還元は“利回り”ではなく“総合力”で語るべき銘柄と言えるでしょう。

EPS成長率から見る収益性

マーシュ・マクレナン(MMC)は、一貫したEPS(1株あたり利益)成長を実現してきた企業です。特に注目すべきは、その成長率が単年度ではなく10年以上にわたって安定的に続いている点です。

2014年から2024年までの過去10年間におけるEPS成長率の平均は25.14%、さらに直近5年間では16%台です。

このようなEPS成長の継続により、**10年間の平均期待収益率は11.78%と試算されています。これは、楽観的ではありますが株主が10年保有した場合に得られる年平均リターンの目安であり、市場平均(S&P500の期待リターン7〜8%)を大きく上回る水準です。

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感想(1件)

理論株価

マネックスより引用

市場平均PERモデルによる理論株価($151.61)

このモデルは、BPS(1株あたり純資産)とEPS(1株利益)に市場平均のPERをかけて算出する保守的な評価手法です。今回の前提では、市場平均PERを15倍とし、MMCの収益性に対して市場が与える標準的な評価を用いています。

結果は**$151.61と、現在の株価($229.33)に対して約0.7倍の水準**。
理論価格よりも市場評価が50%以上高いことになり、「プレミアム評価」と考えられます。

グレアム式理論株価($101.19)

こちらは著名投資家ベンジャミン・グレアムが提唱したEPSと成長率に基づく理論株価モデル
業種別PER(ここでは12倍)に加え、EPS成長率(約11〜12%)を考慮した計算式です: 理論株価=EPS×(業種別PER+2×EPS成長率)理論株価 = EPS ×(業種別PER + 2 × EPS成長率)理論株価=EPS×(業種別PER+2×EPS成長率)

その結果、理論株価は**$101.19にとどまり、現在株価と比較するとわずか0.4倍**。かなり割高な水準であることがわかります。

割高感は「実力プレミアム」か?

どちらのモデルでも、MMCの現在株価は「理論株価」を大きく上回っています。ただし注意すべきは、MMCの高ROE(30%超)、高利益率、安定成長性といった優れたファンダメンタルズが、理論価格以上の“実力プレミアム”として株価に織り込まれている可能性があるという点です。

競争優位性

① 業界トップクラスのブランド力とシェア

Marsh(保険仲介)やMercer(人材コンサル)などの主要ブランドは、それぞれの分野で世界最大級のシェアを誇り、顧客からの信頼も厚い。

② 多角化された収益源

保険仲介、再保険、人材戦略、経営コンサルティングという異なる分野を組み合わせたビジネス構成により、景気変動への耐性が高い。

③ 高い利益率と資本効率

ROEは30%超、営業利益率も20%前後を維持しており、極めて効率的に利益を生み出せる体質を持っている。

④ 安定したフリーキャッシュフローと株主還元

潤沢なフリーCFに基づいた継続的な配当と自社株買いを実施し、株主価値を着実に高めている。

⑤ データとアナリティクスへの強み

リスク評価や人材分析における高度なデータ活用力が競合との差別化要因となっている。

脆弱性・リスク

① 規制・法制度リスク

保険業・人材領域ともに各国の法規制の影響を大きく受けやすく、国際展開に伴うコンプライアンスコストが増加傾向。

② 高いバリュエーションに対する期待先行

現在のPERやPSRは理論株価と比べて高めで、市場の期待が剥がれたときの株価調整リスクがある。

③ 人材への依存度の高さ

コンサルティング部門は人的資本の質が競争力の源泉であり、優秀な人材の確保・定着が経営上の課題。

④ サイバーリスクおよび機密情報の漏洩

多数の企業・政府顧客を持つ関係上、情報セキュリティの重要性が極めて高く、サイバー攻撃は経営リスクとなりうる。

⑤ マクロ経済の信用リスクの波及

景気後退時に企業のリスク移転ニーズが減少する可能性があり、保険関連収益に影響が出る可能性もある。

総評

マーシュ・マクレナン(MMC)は、保険仲介やコンサルティングを主軸とした世界最大級の専門サービス企業であり、高いROEと安定したキャッシュフローを武器に、長期にわたって市場平均を上回る成長を続けてきました。事業の分散性と景気耐性により収益は安定し、株主還元も配当と自社株買いを通じて着実に実施されています。一方で、株価は理論株価を大きく上回っており、将来の成長期待が強く織り込まれた水準にあります。過度な割安感はないものの、「信頼できる成長」を求める長期投資家にとっては、堅実で魅力ある銘柄と言えるかもしれません。

※あくまでも私個人の意見ですので買い推奨をしているわけではありません。

ここまでご覧いただきありがとうございました。

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