UnitedHealth Group Incorporated(ティッカー:UNH)は、アメリカのミネソタ州に本社を置く世界最大級のヘルスケア企業です。主な事業は医療保険「UnitedHealthcare」と、医療サービス・ITなどを提供する「Optum」の2本柱。米国内だけでなく世界中に事業を展開しており、医療費管理・処方薬サービス・医療データ分析など多岐にわたります。
主な事業内容
UnitedHealthcare(ユナイテッドヘルスケア)
・個人・団体向け医療保険の提供
・高齢者向けメディケアや低所得者向けメディケイド保険もカバー
Optum(オプタム)
・医療IT、薬局サービス、データ分析など
・病院・医師・製薬会社などへのコンサルティング・アウトソーシング事業

株価指標

UnitedHealth Group(UNH)は、ROEが24.3%と非常に高く、資本効率の高さが際立っています。PER(株価収益率)は12.5倍と割安感があり、バフェットの基準(20倍以下)を大きく下回っています。PBRやPSRも割高感はなく、財務的にも堅実です。配当利回りも2.8%と米国株としては比較的高水準で、安定した配当政策が評価できます。全体的にみて、成長性・収益性・財務健全性のバランスが取れた優良企業と言えるでしょう。

株価チャート

2014年以降の約10年間で**+312.28%**の上昇を記録しており、同期間のS&P500指数(+262.02%)を大きく上回るリターンを達成しています。
特に2020年以降は業績の拡大とともに株価も大きく上昇し、長期的な資本成長力が際立っています。
ただし、直近では大幅な調整局面を迎えており、株価は一時411.32ドルから約300ドル台まで急落しています(最大下落率-26.62%)。
最近の下落についての懸念事項以下に考えられます。
1. 医療費の急増と業績予想の撤回
2025年第1四半期、Medicare Advantage加入者の医療利用が予想を大きく上回り、利益率が圧迫。
これにより、同社は年間利益予想を引き下げ、
最終的に撤回。
この発表を受けて、株価は1日で22%下落し、過去25年で最大の下げ幅。 Investopedia+5AP News+5Investopedia+5
2. CEOの突然の辞任と経営陣の混乱
2025年5月、CEOのアンドリュー・ウィッティ氏が個人的な理由で辞任し、前CEOのスティーブン・ヘムズリー氏が復帰。 この予期せぬ人事変更と業績予想の撤回が重なり、株価はさらに13%下落。 Investopedia
3. 刑事捜査とスキャンダル
米司法省がMedicare詐欺の可能性について同社を捜査しているとの報道があり。
また、同社が介護施設に対して病院への転院を減らすための秘密の報酬を支払っていたとの報道も株価下落の一因となる。 Investopedia
4. ビジネスモデルへの構造的懸念
同社の垂直統合モデル(保険、医療提供、薬局サービスを一体化)が、医療費の高騰や規制強化の中で逆風。 特にMedicare Advantageプログラムにおける過剰請求の疑惑が、ビジネスモデルの持続可能性に疑問視。

業績推移

UnitedHealth Groupは、過去17年間にわたり持続的な増収増益を実現しています。2007年の売上高754億ドルから、2023年には3,716億ドルへと約5倍に拡大。営業利益・純利益ともに右肩上がりで成長し、
EPS(1株あたり利益)も**$3.42 → $23.86**と大幅に増加しています。
- 売上高成長率:2007年→2023年で約+393%
- 営業利益・純利益ともに安定成長
- 純利益率も4〜6%台で安定
- EPSは毎年連続増配・増益の傾向が続く
営業利益率はおおむね7〜10%のレンジで推移し、保険・医療サービスという低利益率産業の中では高い収益性を維持しているのが特徴です。また、販管費率は年々低下傾向にあり、コスト管理力・効率化の進展も見て取れます。
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株主還元

UnitedHealth Groupは、2014年以降もフリーキャッシュフロー(FCF)と利益剰余金の着実な増加が続いています。
特にフリーCFは2014年の65億ドルから2024年には207億ドル(見込)まで増加し、株主還元の原資が大幅に拡大しています。
- 配当利回りは1.3~1.8%のレンジで推移
- 配当性向も26~40%の範囲で推移し、増配を続けつつ無理のない還元を実現
- 発行済株式数は微減傾向で、自社株買いも着実に実施
毎年フリーキャッシュフローの範囲内で配当を賄っている点は、長期の安定配当・増配の裏付けとなっています。
現在のところ、UnitedHealth Group(UNH)は2025年の業績下方修正に際し、減配を示唆していません。むしろ、同社は2025年3月18日に1株あたり2.10ドルの四半期配当を支払っており、これは前年同期比で増配となっています 。ユナイテッドヘルスグループ
2025年4月の第1四半期決算発表では、医療費の増加により通期の利益見通しを引き下げましたが、配当政策に関する変更や減配の言及はありませんでした 。さらに、同社は第1四半期に約50億ドルを配当と自社株買いを通じて株主に還元しており、株主還元姿勢を維持しています 。ユナイテッドヘルスグループ
ただし、5月13日にはCEOの交代とともに2025年の業績見通しを撤回し、医療費の増加が予想以上に広範囲に及んでいることを明らかにしました 。現時点で減配の発表はありませんが、今後の業績やキャッシュフローの動向によっては、配当政策の見直しが行われる可能性もあります。
過去の支払い配当

また同社は、過去9年連続で増配を続けており、株主還元への積極的な姿勢が際立ちます。
- 年間配当額は2015年の1.88ドルから2024年には8.18ドルへと約4.4倍に増加。
- 年平均増配率は10~26%台と非常に高く、特に2016~2019年は20%超の高水準を記録。
- 2020年以降は増配ペースがやや鈍化していますが、それでも直近の2024年で+12.21%の増配と、安定した増配基調が続いています。
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EPS成長率から見る収益性

過去10年間でEPS(1株利益)が年平均10%のペースで成長してきました。
2014年のEPSが5.89ドルだったのに対し、2023年には24.28ドルと、約4倍に増加しています。
この成長率が今後も続くと仮定した場合、10年後の予想EPSは42.12ドル、理論株価は1,034.57ドルと試算されています。
※10年後の予想株価計算式
10後の予想EPS×平均PER25倍
- 過去10年のEPS成長率:年率10%
- 10年後の予想EPS:42.12ドル
- 10年後の予想株価:1,034.57ドル
- 10年間の期待収益率(年率):約13.1%
直近5年はコロナ禍や直近の業績下方修正もあり、成長率が鈍化する傾向が見られますが、それでも過去10年トータルで見ると、UNHは非常に高い利益成長力と期待収益率を維持してきたことが分かります。
ただし四半期ごとのEPSをみると以下の通りです。

UNHは基本的に安定したEPS成長を続けているものの、四半期ごとには医療費増加や一時的なコスト増、会計上の特殊要因で大きく利益がぶれる局面もあります。こうした短期の変動は米国医療保険業界全体の特徴でもあり、長期的な成長性を見る上では年間ベースでのトレンドを重視するのが重要です。
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理論株価

マネックスより引用
- 直近株価(2024/5/30):301.91 USD
- PER基準 アナリスト予想:375.01 USD(レンジ 277.77~472.26 USD)
- PBR基準 アナリスト予想:431.00 USD(レンジ 277.62~584.38 USD)

簡易理論株価
算出式: BPS+(EPS×市場平均PER)
- 市場平均PER:23倍
- 簡易理論株価:472.83ドル
- 現在株価(301ドル)に対して1.6倍の割安感
グレアム式理論株価
算出式: EPS×(業種別平均PER+2×EPS成長率)
- 業種別平均PER:25倍(仮)
- グレアム式理論株価:397.01ドル
- 現在株価に対して1.3倍の割安感
計算式解説
1. 簡易理論株価の数式
簡易理論株価=BPS+(EPS×市場平均PER)
各要素の意味
- BPS(Book Value Per Share/1株あたり純資産)
→ 企業の“純資産”を株数で割った指標。最低限の価値の目安。 - EPS(Earnings Per Share/1株あたり利益)
→ 直近の年間利益を株数で割った指標。企業の稼ぐ力を表す。 - 市場平均PER(株価収益率)
→ S&P500など、市場全体の平均PERを使用(例:23倍)。
→ 成長株ほど高くなりやすい。
イメージ
BPSで最低価値をおさえつつ、EPS×PERで「将来も同じ収益力が続くならどれくらいの価値か」を足し合わせたシンプルな理論株価です。
2. グレアム式理論株価の数式
グレアム式理論株価=EPS×(業種平均PER+2×EPS成長率)
各要素の意味
EPS成長率
→ 直近5年や10年の年平均EPS成長率(%をそのまま数字として使う。例:10%成長なら「10」として代入)
EPS
→ 1株あたりの純利益
業種平均PER
→ その業界(例:ヘルスケア、保険)の平均PER(例:25倍)
バリュエーション指標で見ると、UNHの理論株価は簡易式で約473ドル、グレアム式で約397ドルと、いずれも現在株価(301ドル)を大きく上回っています。これは市場平均や業種平均のPERを用いた場合、割安圏にあるという結果を示しています。
特にEPS成長率が高い企業は、PERベースの理論株価も高くなりやすく、長期成長を期待する投資家にとっては魅力的なバリュエーションといえるでしょう。ただし、将来の成長率やPER水準は変動するため、複数の観点から総合的に評価することが重要です。

競争優位性
- 圧倒的な市場シェアと規模
米国最大手の医療保険・ヘルスケアサービス企業として、スケールメリットを活かした強力な交渉力・コスト競争力を持つ。 - 多角化事業(保険+医療IT・サービス)
保険事業(UnitedHealthcare)だけでなく、医療IT・薬局サービス(Optum)も展開し、収益基盤が分散・安定している。 - データ活用・IT基盤の強さ
医療データ、ITインフラ、分析技術により、オペレーション効率・医療コスト削減・新規ビジネス創出で優位。 - 高い参入障壁
規制産業であり、認可・資本・ノウハウ・顧客ネットワークなど参入障壁が非常に高い。 - 顧客基盤の多様性・強さ
個人、法人、行政など多岐にわたる顧客を抱え、リスク分散とブランド信頼性で高い顧客ロイヤルティを維持。
脆弱性
- 政策・規制リスク
米国医療制度改革や公的保険拡大、薬価規制など、政府方針次第で利益構造が大きく変動するリスク。 - 大手競合の存在と競争激化
Elevance Health、CVS Health、Cignaなど、他のメガプレイヤーによる価格競争・サービス競争が年々激化。 - 医療費高騰と予測困難性
医療費増加やパンデミック時の予期せぬコスト急増で、利益が急減するケースがある。 - サプライヤー/病院側との交渉力リスク
一部の病院グループや製薬会社は強い交渉力を持ち、コスト高やネットワーク喪失のリスクがある。 - 新規プレイヤーの脅威(テック企業など)
GAFAなどのビッグテック企業がヘルスケア分野に参入し始めており、将来的なディスラプションリスク。
UNHは圧倒的な規模、多角化事業、IT・データ基盤、参入障壁、顧客基盤の強さを背景に高い競争力を持っています。一方で、政策リスクや業界競争、医療費高騰、サプライヤー交渉力、新規参入の脅威といった脆弱性にも注意が必要です。外部環境変化に対する柔軟な対応力が、今後の持続的成長の鍵となるでしょう。
総評
UnitedHealth Group(UNH)は、米国最大級の医療保険・ヘルスケア企業であり、主力の医療保険事業に加えて医療ITや薬局サービスなど多角的に事業を展開しています。売上、利益、キャッシュフローは過去10年以上にわたり安定した成長を継続し、EPSや年間配当もおおむね年平均10%前後の増加傾向が見られます。また、連続増配を継続し、株主還元にも積極的な姿勢を示してきました。
財務指標としては、ROEや自己資本比率が業界トップクラスであり、PERやPBRなどのバリュエーション指標も米国市場平均や理論株価と比較して割安水準と分析されています。アナリスト予想やバリュエーションモデルでも、現状の株価はおおむね理論値の範囲内とされており、インカム・キャピタル両面で安定感のある財務体質が確認できます。
一方で、直近では業績見通しの下方修正や株価の調整局面が見られ、主な要因として医療費の想定を上回る増加、政策リスク、医療制度改革、法規制強化、競争激化、サプライヤーや病院との交渉力、新規テクノロジー企業による参入などが指摘されています。米国政府の政策動向や医療費トレンドが同社の業績や株価に影響を与えやすい点は引き続き注視が必要です。
ここまでご覧頂きありがとうございました。
※公式資料・アナリストレポート・市場データ等をもとに、事実に基づく情報をまとめました。なお、本記事は特定の投資判断を推奨するものではなく、参考情報の提供を目的としています。投資判断はご自身の責任とリサーチで行ってください。
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